3人で見たのに、誰も見ていなかった
チェックはAIに任せる時代へ
トリプルチェックの3人目
「現場猫」をご存じでしょうか。ヘルメットをかぶった猫が、指差し確認をして「ヨシ!」と言う、ネットでおなじみのイラストです。その現場猫が3匹、チェック表を手に並んでいる絵があります。
1人目は「後の2人がちゃんと見てくれるだろうからヨシ!」。2人目は「1人目が合格にしてるし、3人目も見てくれるだろうからヨシ!」。3人目は「前の2人が合格にしてるんだから絶対ヨシ!」。
3人がチェックしたのに、実際に中身を見た人は1人もいません。笑ってしまいますが、どこの会社でも起きていることです。
人は段数が増えるほど「誰かが見るだろう」と甘えます。AIは前後の人をあてにしません。
人間には「面倒くさい」がある
確認作業は面倒くさいものです。真面目な人でも、毎日同じ書類を何十枚も見ていれば、どこかで気が緩みます。
だから会社は、1人では見落とすかもしれないと考えて、ダブルチェック、トリプルチェックを用意します。人間の「面倒くさい」を、人数で補おうとしているわけです。
段数を増やすと、人は甘える
ところが、ここに落とし穴があります。人は「ほかにも見る人がいる」とわかると、自分の確認を少しだけ緩めます。怠けているのではありません。人間はそういう性格をしています。
段数を増やすほど、一人ひとりの確認は薄くなります。最後には、ハンコが3つ並んでいるのに誰もちゃんと見ていない書類ができあがります。チェックの人数を増やしても、確かさは増えないのです。
AIには「面倒くさい」がない
AIにチェックをさせる一番の良さは、この「面倒くさい」と「甘え」がないことです。
前の人が誰であっても、AIは同じように見ます。責任者の承認が付いていても、ベテランが作った書類でも、遠慮しません。100枚目の請求書も、金曜日の夕方に回ってきた見積書も、1枚目と同じように最後の行まで読みます。
しかも、何を見たかを言葉で返せます。「単価と数量を掛けた金額が、小計と合っていません」「宛名の会社名が、先月の書類と違います」。「ヨシ!」の一言で済ませず、どこが気になったのかを理由つきで知らせてくれます。
人に頼むより、安くて、文句を言わない
チェックのために人を1人増やせば、毎月の人件費がかかります。頼まれた側も、本来の仕事の手を止めて確認をすることになり、内心では面倒だと思っているかもしれません。
AIは、人を雇うよりずっと安く使えます。夜中でも休日でも、何度頼んでも文句を言いません。確認という仕事に関しては、人に頼むよりAIに頼むほうが、よほど安くて効果的だと私は考えています。
最初のAI導入は「チェッカー」から
AIの導入というと、文章を書かせたり、仕事を自動化したりする話になりがちです。でも中小企業が最初に取り組むなら、チェッカーとしての導入をおすすめします。作るのは今まで通り人間で、AIは横から全部に目を通すだけ。今の仕事の流れを変えずに始められます。
見積書・請求書の確認
金額の計算、日付、宛名、消費税の扱いなど、毎回同じところを同じように見る仕事です。
発注書と納品書の突き合わせ
品名や数量が合っているかを1行ずつ照らし合わせます。人がいちばん飽きやすい仕事です。
お客様に送る文書の確認
メールや案内文の誤字、敬語、言い回し、添付し忘れていないかを、送る前に見ます。
社内ルールに沿っているかの確認
決められた書式や手順で書類が作られているかを確かめます。ルールが文書になっていれば、AIに覚えさせられます。
当社がおすすめしている「AIを「社員」として迎えるという使い方」でも、AI社員の最初の仕事は「見張り役」です。読むだけ、知らせるだけなので、AIが間違えても実害がありません。チェッカーは、AIを安全に迎え入れる入り口にぴったりです。
人間なら3人。AIなら1人で十分
人間のチェックで3人が必要なのは、1人ひとりに「面倒くさい」と見落としがあるからです。AIには甘えがないので、まずは1人でも、3匹の現場猫よりずっと確かなチェックになります。
そして慣れてきたら、AIに3つの方向から確認させてみてください。たとえば見積書なら、1回目は金額と計算だけ、2回目は宛名や日付、品名などの中身だけ、3回目は社内のルールや過去の取引と比べておかしなところがないかだけを見させます。
人間で同じことをしようとすると、担当を3人そろえ、それぞれに教え込まなければなりません。AIなら見る方向を変えて頼み直すだけで、手間も費用もほとんど増えません。同じことを3回見るより、3つの方向から1回ずつ見るほうが、効果は大きく上がります。
最初は1つの方向からで構いません。効果を確かめながら、見る方向を増やしていけばよいのです。
ただし、4人目にならないこと
気をつけたいことが一つあります。AIを入れたとたん、人間の側に新しい4人目が生まれやすいことです。
「AIが見たんだから絶対ヨシ!」
これでは、現場猫が1匹増えただけです。AIも見落としはしますし、もっともらしい間違いを言うこともあります。
役割を分けてください。AIは、全部を同じ熱量で見て、気になったところを挙げる役。人間は、AIの指摘を読んで、本当に問題かどうかを最後に判断する役です。人間が全部を見るのではなく、AIが挙げたところを判断する。これなら人間の「面倒くさい」も小さくなり、3人で見るよりずっと確かなチェックになります。
どの仕事から任せるかを、一緒に決めます
チェックの仕組みがうまく働かない原因は、人の能力ではなく「誰かが見るだろう」という構造にあります。その構造の外から、面倒くさがらずに毎回全部を見てくれるのがAIです。
当社の「ITの現状調査と報告書」では、御社の業務の流れを拝見し、どの確認作業をAIに任せられるかもご提案します。AIを使い始めるときのルールづくりは「AIを安全に使い始めるルールづくり」でお手伝いしています。